西川町大井沢自然博物館研究誌
第4号
− 目次(要旨)−
P1-3 向山 満・作山 宗樹・  大沢 八州男・陶山 大輔・中山 文仁 大井沢自然博物館収蔵のコウモリ液浸標本について
要旨:西川町大井沢自然博物館収蔵のコウモリのホルマリン液浸標本2体について、著者らは2008年9月に種名の検証を行った。その結果、種名が不明とされており、モリアブラコウモリPipistrellus endoiの可能性があるとされた標本はアブラコウモリPipistrellus aburamusであることを確認し、山形県内ではモリアブラコウモリの記録が無いことを確認した。また、オオミミコウモリとされていたコウモリはコテングコウモリMurina ussuriensisであることを確認した。
P4-12 辻 徹 山形県の野生メダカの生息分布について
   ―西村山地域の生息地を中心に―
要旨:日本に生息する野生メダカは,大きく南日本集団と北日本集団のメダカに分かれる。山形県には,北日本集団のメダカが分布し,2004年には140か所以上の生息地が確認されている。これらの山形県の野生メダカのcyt-b遺伝子の変異を調べると,庄内地方にはA1型が多く,内陸部ではこの地方にしか見られないA5型が分布している。
一方,宇宙メダカやペットショップで売っているペット用のメダカを調べるとB27型を示し,南日本集団メダカを祖先雌に持つことが分かった。遺伝子かく乱を防ぐ上でも,安易なビオトープづくりや放流はやめなければならない。
P13-16 武浪 秀子・沢 和浩 2009年度月山志津池沼群における水生植物・昆虫類の現況報告
要旨:2009年度,山形県西川町志津の池沼群のうち,湯殿山南部及び地蔵沼付近の2箇所の池沼に生息する水生植物・昆虫類を中心とした現況を調べた。その結果,ミクリ属やヒルムシロ属などの数種の希少な動植物を観察することができたので状況を報告したい。
P17-20 中村 夢奈・小城 伸晃 大井沢(山形県西村山郡西川町)のニホンヤマネGlirulus japonicus 
第3報−飼育下における行動観察−
要旨:本研究は、東北地方のヤマネの生態と好適な生息環境を解明し、本種の保全に関する新たな知見を得ることを目的に、大井沢地区で継続的に行っている巣箱を用いたモニタリング調査中に捕獲されたヤマネの飼育下における長期行動観察を行った。その結果、大井沢のヤマネは10月中旬から5月上旬の少なくとも6ヵ月半の間冬眠することが示唆された。今後は大井沢のヤマネとその周辺環境との関連性を解明することで、冬期の環境条件が厳しい東北地方のヤマネの生き残り戦略を探っていきたい。
P21-23 武浪 秀子 西川町大井沢地区におけるナガエミクリの記録
要旨:2009年10月西川町大井沢地区にて,これまで同町内では未記録であったナガエミクリSparganium japonicum Rothertの結実個体の生育を確認し花序・果実の観察や計測を行った。県内における山間部のミクリ属の分布について今後の参考となるのではないかと思われる。
P24 紺野 広昭 ヤンコウスキーキリガの記録
P25 沢 和浩 ユキグニハリスゲ Carex semihyalofructa Tak.Shimizuについて
<コラムなど>
P26-27 佐藤 征男 〜森人の記憶〜 山(緑)との係わりを振り返って
P28-29 前田 武 〜森人の記憶〜 舞茸採り
P30-34 平成21年度博物館活動記録
※当研究誌は,平成21年度(財)ダム水源地環境整備センターのダム水源地域サポート事業の助成を受けおります。

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