西川町大井沢自然博物館研究誌
第6号
− 目次(要旨)−
P1-6 井上 邦彦・草刈 広一 朝日山地のハイマツを加害するハバチ類について
要旨:山形県朝日山地の大朝日岳周辺のハイマツで,ハバチ類の幼虫が多数発生していたことを確認した.本種は1990年前後に北海道のキタゴヨウ林などで大発生し,近年白神山地のハイマツを枯死させているマツノクロホシハバチと判明した.今後ハイマツの被害の拡大が懸念されることから,幼虫密度の継続調査が必要と判断し着手した.その結果,マツノクロホシハバチのほかに大雪山や中央アルプスなどでハイマツを食害しているタカネヒラタハバチに近縁と思われる種の食痕も確認された.従って,夏期(成虫期)の調査も加えて行い,さらに両種の正確な同定と生活史の把握が必要である.
P7-10 中村 夢奈・小城 伸晃 大井沢(山形県西村山郡西川町)のニホンヤマネGlirulus japonicus 
第5報−行動圏面積と日内休眠場所−
要旨:ニホンヤマネGlirulus japonicus(以下 ヤマネ)は,囓歯目に属する樹上性小型哺乳類で,山形県では絶滅危惧種に指定されている.本研究は,東北地方のヤマネの行動圏面積と日内休眠場所の植生環境を解明し,本種の保全に資する新たな知見を得ることを目的にしている.小型電波発信機を用いた調査の結果,日中に利用した日内休眠場の位置を結んでできる行動圏は2.2ha(メス,n=1),夜間の行動圏を含めると7.3haとなった.豪雪地帯に生息するヤマネの行動圏は本州中部以南の個体と異なる行動圏面積である可能性がある.
P11-12 吉田 馨・武浪 秀子・横山 潤 西川町におけるイイヌマムカゴTulotis iinumae (Makino) Hara(ラン科)の記録
要旨:西川町でイイヌマムカゴの生育地を発見した.本種は町内のスギ林下の緩斜面に小群で生育しており,少なくとも6年間は安定して生育していることが確認された.生育環境に特別な要素は見いだされず,近県の生育状況との比較からも,県下のスギ林を詳細に調査することで,さらに自生地が見つかる可能性があると考えられる.
P13-20 渡邊 潔・白鷹町教育委員会 白鷹町湿原における希少野生生物の保全活動と効果調査
P21-23 武浪 秀子 西川町のリュウキンカ属−大井沢におけるエゾノリュウキンカの現状−
要旨:山形県西川町には山間部の湿地や水田,堰の周辺にリュウキンカが広く生育している.一方,エゾノリュウキンカは稀で大井沢周辺では確認されていなかった.しかし,2010年5月に西川町大井沢地内でエゾノリュウキンカに似た植物が見つかり,昨年度から野外観察を行ってきた.観察により植物はエゾノリュウキンカであると考えられ,今後様々な調査を通してCaltha属に関する一層の理解を深めていきたい.
P24-26 紺野 広昭 山形県内におけるシタバガ類の記録 
P27-29 藤田 宏之・武浪 秀子 西川町のシマヘビの記録について
要旨:山形県西川町には山間部の湿地や水田,堰の周辺にリュウキンカが広く生育している.一方,エゾノリュウキンカは稀で大井沢周辺では確認されていなかった.しかし,2010年5月に西川町大井沢地内でエゾノリュウキンカに似た植物が見つかり,昨年度から野外観察を行ってきた.観察により植物はエゾノリュウキンカであると考えられ,今後様々な調査を通してCaltha属に関する一層の理解を深めていきたい.
P30-31 橋本 勝・阿部 啓二・武浪 秀子 キジバトStreptopelia orientalisを使った次列風切羽第5羽欠如
(diastataxy)形質の標本化
P32 紺野 広昭 オオクロハナカメムシの採集記録
P33-43 武浪 秀子 西川町大井沢自然博物館収蔵山形県産チョウ類目録
要旨:西川町大井沢自然博物館に収蔵されている昆虫標本の中からチョウ類標本(2011年11月現在)を整理し目録を作成した.標本にはギフチョウ,オオゴマシジミ等の絶滅危惧種をはじめ,迷蝶のチャバネセセリや西川町初記録のツマグロヒョウモンといった貴重な標本が保存されている.
<コラムなど>
P44-45 芳賀  竹志 = 山人の記憶 =  山菜栽培のルーツか?月山の羽後薊
P46-47 前田  = 山人の記憶 = 竹の子と熊 
P48-50 平成23年度博物館活動記録
※当研究誌は,平成23年度(財)河川環境管理財団『河川整備基金事業』の助成を受けております。

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