西川町大井沢自然博物館研究誌
− 目次(要旨)−
P1-5 工藤 純一 鳥海山に自生するオオバキスミレの形態的特徴
鳥海山に自生するオオバキスミレとミヤマキスミレの分布状況及び茎生葉の形状について定量的調査を行い、月山及び庄内地方の低山に自生する個体群の形態と比較しながら、その特徴を明らかにした。
P6-11 小城 伸晃・中村 夢奈 大井沢(山形県西村山郡西川町)のニホンヤマネGlirulus japonicas 第6報 −行動圏面積と休眠場所の特性 U−
ニホンヤマネ(以下ヤマネ)は,山形県において絶滅危惧U類に指定されている樹上性小型哺乳類である.同種の調査研究については関東・甲信越地方に集中しており,東北地方における研究は著しく少ない.本研究では,山形県の大井沢に生息するヤマネの行動圏面積と休眠場所を明らかにし,関東・甲信越地方における先行研究との比較を行った.ヤマネの追跡には小型電波発信機を用い,日中の休眠場所の夜間の位置を特定した.行動圏の推定には固定カーネル法(Fixed Kernel) と100%最外郭法(100%Maximum Convex polygon)を使用した.その結果,ほとんどの個体は休眠場所に2m以上の樹上を利用しており,利用された樹木は高木・落葉広葉樹の割合が高かった.関東・甲信越で行われた先行研究の結果と比較すると,行動圏面積は山形県の方が広域な値を示した.また,休眠場所の樹上利用の割合も関東・甲信越地方と比較して高かった.以上のことから,ヤマネの行動圏面積及び休眠場所には地域的な差異がある可能性が示唆された.
P12-16 川上 新一・真鍋 雅彦 西川町に産する変形菌(II)
西川町から新たに採集された変形菌19 種類(変種および品種を含む)について報告する。これらは
2011 年6 月から11 月にわたって採集された標本に基づく。8 種類が県内新産であると思われる。
P17-18 武浪 秀子・草刈 広一 朝日山系山麓(小国町)で確認されたヘビのアルビノ個体の記録
2012 年7 月に山形県小国町内の民家の庭で白色を帯びたヘビ1 個体が見つかった.本種は,外部形態などの特徴からアオダイショウElaphe climacophora のアルビノ(白化型)個体と考えられる.アオダイショウは,山形県内の低地〜山地に広く分布し,人家周辺にも多く生息しているが,野外でのアルビノ個体の確認記録は全国的に稀であるため本県の爬虫類相を知るうえで貴重な記録となるものと考えられる.
P19-22 工藤 純一 月山における北方系と南方系ヨツバシオガマの生育状況
月山には北方系統と南方系統という、二つの異なる葉緑体DNA系統に属するヨツバノシオガマが自生していることが報告されているが、現状における両者の生育状況を調査した。
P23-26 武浪 秀子・沢 和宏 寒河江川上流域(西川町上島)に生育する希少植物
寒河江川上流域の自然環境の現況を把握するため,2012 年に植物現況調査を行った.調査地は寒河江川沿いにレクリエーション施設として整備された場所で,小池や小湿地が数か所残っている.調査の結果,116種の維管束植物が生育し,3 種が絶滅危惧植物であった.
P27-42 武浪 秀子 西川町大井沢自然博物館収蔵ガ類標本目録
 西川町大井沢自然博物館に収蔵されている昆虫標本の中からガ類標本(2012 年12 月現在)を整理し目録を作成した.
 その結果,27 科42 亜科269 種の山形県産ガ類標本を目録にまとめたところ,最も古い標本は1959 年に西川町で採集されていた.今回まとめた目録は、山形県のガ類相を知る上での貴重な記録となるだろう.
<随筆など>
P43-45 小林 彰 = 大井沢回想録 = 自然研究の祖 佐藤喜太郎先生
P46-47 佐藤 正富 = 山人の記憶 = ぜんまいについて
P48-50 前田 武 = 山人の記憶 = 炭やき
P51-53 平成24年度博物館活動記録
※当研究誌は,平成24年度(財)河川環境管理財団『河川整備基金事業』の助成を受けております

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