西川町大井沢自然博物館研究誌 | |||
第8号 | |||
− 目次(要旨)− | |||
P1-6 | 草刈 広一 | 朝日山地におけるハヤチネフキバッタの低所分布と地理的変異 | |
日本特産で,北海道と本州北部に生息するハヤチネフキバッタについて,朝日山地内での垂直分布や生息環境の特徴を,南限の生息地・飯豊山地と比較しながら考察した。朝日山地東部において,体色の黒化傾向が著しい集団を発見した。その特徴とともに,標高が低く孤立したその生息地の様子も記述した。 | |||
P7-11 | 小城 伸晃・中村 夢奈 |
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ニホンヤマネ(以下ヤマネ)は,山形県において絶滅危惧U類に指定されている樹上性小型哺乳類である.同種の調査研究については関東・甲信越地方に集中しており,東北地方における研究は著しく少ない.本研究では,2009年から2013年の間に巣箱を用いたヤマネの生息調査を行なった.5年間における総識別捕獲個体数は26頭で,1頭当たりの平均再捕獲回数は2.04回であった.ヤマネは4月から11月の間捕獲され,6月に捕獲のピークが見られた.本研究によって,ヤマネの冬眠期間は関東・甲信越地方より長い7カ月あることが示唆された | |||
P12-17 | 江崎 保男・中島 拓・東 淳樹 | 月山湖上流端および寒河江川上流部の鳥類群集 | |
月山湖上流端の水位変動域と、これより上流に位置する寒河江川の流水域に計3カ所の定点を配置し2009年の6月・8月・10月に鳥類の定点調査を行うとともに、ダム建設以前は左岸高水敷であった上流端堤外地のテラスで鳥類センサスを行うことにより、寒河江川の鳥類群集の概要を明らかにした。出現した鳥類は35種であったが、このことにはテラスの樹林あるいは草原に依存する陸鳥が大きく関与しており、寒河江川本来の鳥類群集は7種程度の少数種で構成されていると結論できた。ダム湖の存在はカモ類など止水に生息する種に新たな生息場を提供しているものの、河川上流域に元々生息する鳥類には不安定な生息場を提供しているに過ぎないと考えられる。 | |||
P18-21 |
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キムネクマバチによるエゾエンゴサク(ケシ科)への盗蜜行動の観察 | |
西川町でエゾエンゴサクに対するキムネハナバチの盗蜜行動を観察した。キムネハナバチの訪花は2011年5月19日に西村山郡西川町本道寺で観察され、キムネクマバチは訪花したすべての花で、距に大顎で穿孔して吸蜜した。本県ではエゾエンゴサクの開花はキムネクマバチの活動開始より早いと考えられ、今回観察された盗蜜行動は稀な事例と考えられるが、キムネクマバチがエゾエンゴサクに対する潜在的な盗蜜者となることを示している事例として報告する。 | |||
P22-26 | 工藤 純一 | オオバキスミレとミヤマキスミレの可逆性 | |
月山姥沢地区と母狩山山麓に生息するミヤマキスミレとオオバキスミレについて、地下茎での繋がり、及び茎生葉の輪生型から非輪生型への変化という観点から調査を行い、両者の可逆性を明らかにした。 | |||
P27-28 | 武浪 秀子 | 西川町大井沢にてキヨスミウツボ(ハマウツボ科)を記録 | |
寒河江川上流域の自然環境の現況を把握するため,2012 年に植物現況調査を行った.調査地は寒河江川沿いにレクリエーション施設として整備された場所で,小池や小湿地が数か所残っている.調査の結果,116種の維管束植物が生育し,3 種が絶滅危惧植物であった. | |||
P29-40 | 武浪 秀子 | 西川町大井沢自然博物館鳥類標本目録 | |
西川町大井沢自然博物館に収蔵標本の中から鳥類標本(2014年1月現在)を整理し目録を作成した.その結果,45科92属122種の鳥類標本が収蔵されていることが分かった.標本には、イヌワシやクマタカなど環境省の国内希少野生動植物種に指定されている標本もあり、本県の鳥類相をはじめ、鳥類の分布を知る上で貴重な記録であると考えられる. |
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<随筆など> | |||
P41-42 | 沢 和浩 | 2013年朝日山地トウヒレン属実態調査から | |
P43-44 | 佐藤 耕二 | = 山人の記憶 = 自然学習で学んだこと | |
P45-46 | 前田 武 | = 山人の記憶 = 自然学習 | |
P47-49 | 平成25年度博物館活動記録 | ||
※当研究誌は,平成24年度(財)河川環境管理財団『河川整備基金事業』の助成を受けております |